アスレチックス・マーテイ メジャー最高打率なのに首位打者になれない?

 アスレチックスのスターリング・マーテイは現在、メジャートップとなる打率.321をマークしている。しかし、残念ながらマーテイが首位打者のタイトルを獲る可能性は0%だ。なぜ0%と断言できるのか。それはマーテイがシーズン途中でナ・リーグの球団(マーリンズ)からア・リーグの球団(アスレチックス)へ移籍したため、それぞれのリーグの規定打席に到達できないからである。なお、マーテイは打率だけでなく盗塁でもメジャートップの数字(45盗塁)をマークしているが、こちらもタイトルは獲れそうにない。

 首位打者のタイトルを獲得するためには原則として規定打席に到達していることが必要であり、162試合制のシーズンであれば規定打席は502打席(試合数の3.1倍)となる。マーテイは現在466打席のため、残り16試合で36打席以上ならば規定打席をクリアできる。ところが、ア・リーグの首位打者になるためにはア・リーグだけで規定打席に到達する必要があり、それはナ・リーグも同様。マーリンズで275打席、アスレチックスで現在191打席のマーテイはどちらのリーグでも規定打席に大きく届かないため、首位打者争いをする資格すらないのだ。

 メジャー最高打率をマークしたにもかかわらず首位打者になれなかった選手は過去にもいる。1990年のエディ・マレー(ドジャース)だ。殿堂入りの名打者であるマレーはこの年、自己最高打率となる.330をマーク。しかもマレーはマーテイと異なり、シーズン途中に移籍したわけではない。ナ・リーグの規定打席をしっかりクリアした。

 では、なぜ首位打者になれなかったのか。それはウィリー・マギーがカージナルスでの542打席で打率.335をマークしたあと、8月末にトレードでアスレチックスへ移籍したからだ。マギーはアスレチックスでの123打席で打率.274にとどまり、シーズン通算の打率は.324でマレーを下回った。しかし、ナ・リーグの規定打席をクリアしており、打率.335はナ・リーグの1位。よって、マギーがナ・リーグの首位打者となり、マレーは首位打者のタイトルを獲得できなかった。

 また、マーテイは今季45盗塁を記録し、ここでもメジャートップの数字をマークしている。ところが、マーリンズで記録した22盗塁はすでにリーグ4位となっており、盗塁王にはなれない。アスレチックス移籍後は23盗塁を記録し、こちらもリーグ4位タイにランクインしているが、ウィット・メリフィールド(ロイヤルズ)が40盗塁で独走しており、残り16試合でメリフィールドに追いつくのは不可能だろう。つまり、マーテイは打率と盗塁の両部門でメジャートップの数字を残しながらも「無冠」に終わることが確実なのだ。

 エリアス・スポーツ・ビューロー社によると、同一シーズンに盗塁で両リーグのトップ10にランクインした選手は過去に1人もいないという(マーテイは両リーグのトップ5にランクインしたまま今季を終える可能性がある)。また、安打や二塁打、奪三振といった他の部門に目を向けても、完投数で両リーグのトップ10にランクインした投手が数名いるだけだという。「無冠」が確実なマーテイだが、珍記録の達成者としてメジャーリーグの歴史に名を残すことになりそうだ。

引用元 :mlb.jp photo – MLB Advanced Media

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この記事を書いた人

神戸出身。2001年、地元オリックスのスーパースターであるイチローのマリナーズ移籍をきっかけに本格的にMLBに興味を持つ。2016年に完全オリジナルのMLB選手名鑑を自費出版したことがきっかけでMLBライターに。2021年にはSPOZONE(現SPOTVNOW)で解説者デビュー。Twitter:@y_MuLB

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